2022.03.08
自分の人生における最高の買い物はペアリングだと思う。駅ビルのショッピングセンターにあるアクセサリーショップで買った、そんなに高くない指輪で、シンプルだけれど内側にシークレットストーンがあるのが気に入っている。1ヶ月に1度くらいしか会えないから、普段はそのペアリングを御守り代わりに右手の薬指に付けて過ごしていた。
4年8ヶ月の遠距離恋愛を終えて、恋人と一緒に暮らすことを決めた。その準備のために、必要なものを買い揃えながら、このひとつひとつの買い物が素晴らしい生活に繋がってくれればと切に願う。これからは、冷蔵庫やベッドやダイニングテーブルが新しい御守りになってくれると信じて購入ボタンを押す。未来を作っていくための大切な買い物。ふたりのもの、として買うことの意味を噛み締めながら、入居日の前に届いてしまわないように配達指定をして、買う。
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退職することを告げると、寂しがったり惜しんでくれる人たちもいた。本当にありがたいことだった。「安定感があっていつも優しいから、朝来たときにあなたがいると安心できた」とか、「あなたはなんでもできるから、どこへ行っても大丈夫」とか、自己評価とはかけ離れた自分の印象をみんな語ってくれた。お世辞だとしても驚いた。世間知らずで要領の悪い自分を実態以上に頼ってくれていたことは、うれしくもあるが怖さもある。そんなときに、モグライダーの芝さんがインタビューで語っていた言葉をよく思い出す。
世の中的には何も知らないし、何もできないのに「芝さん、芝さん」って、まるで全部できる人みたいに頼られる。神輿に担がれて、「頼られても知らねぇよ」とは言えない状態で、正直、それがしんどかった。でも、芸人やめる根性もない。じゃあ、どうするかっていったら、頼られている自分に、本当の自分を合わせるしかない。大人になるしかない。
M-1トップバッターの最高点を叩き出したモグライダー。順番が違っても「優勝は無理だった」理由 | 日刊SPA!
頼られている自分に、本当の自分を合わせる。今の自分が職場でやっていたことも、まさにこういうことだったかもしれないなと思う。違うんだけどな、と言い訳するよりも、頼られたら一生懸命にやるしかなくて、覚悟を決めて積み上げた先で、誰かに一生懸命な姿が伝わってくれていたのなら喜ばしいことだ。
好きな仕事だった。自分の性格にこんなに向いている仕事は他にないのではないかと思ってしまうくらいに。ずっと続けていくことも出来たし、慕ってくれる仲間や後輩もいた。けれど辞めることに後悔はない。選んだ道を正解にするんだ、と自分に言い聞かせる。