勘違いしないでほしい。俺はチョコレートさえ食べられればあとはなんでもいいのだ。
自分で買って食べたとて、チョコレートは美味しい。この季節になると様々な場所で過剰包装気味のチョコレートを目にするが、そんな飾りなどビリッビリに切り裂いてしまいたい。俺はとにかくチョコレートが食べたくて仕方がない。
製造元は問わない。GODIVAがなんだ、ROYCEがなんだ、Morozoffがなんだ、Mary'sがなんだ。ジャンポールエヴァンだろうとデルレイだろうとデメルだろうと、もう森永でも明治でもロッテでもチロルでもいい。それがチョコレートであるのなら、なんだって摂取してやりたい。
1LDCの部屋に住みたい。Cはチョコレートのことである。チョコレートさえあればキッチンはいらない。チョコレートの海に溺れたい。それが沼でも構わない。全身をチョコレート塗れにしたあと冷えて固まりたい。六花亭のストロベリーチョコ状態になりたい。
もはやグミでもいい。俺はグミが好きだ。柔らかいやつも硬いやつも好きだ。中学生の頃、サワーズばかり食べていた。しかし高校になるとピュレグミの良さがわかってきた。コンビニに行った当時高校生の僕は、お菓子売り場で突然サワーズにこう言われた。
「私のこと、どう思ってるの!?」
「好きだよ、うん、好きだ」
「でも最近全然構ってくれないじゃない!昔はあんなに私を求めてくれたのに!」
サワーズがヒステリック気味になっていると、横からピュレグミが声を挟む。
「あ、あの…」
「なによ!」
「俺くんは私のことが…す…すきみたいなんです…」
「あんたなんてただすっぱいだけじゃない!俺くんは私のものなんだから!」
サワーズは隣の棚に陳列されたピュレグミを振り落とさんばかりの勢いで飛びかかる。俺はピュレグミを守ろうと慌てて手に取り、買い物カゴの中に避難させる。
「おのれピュレグミめ!」
「待て、サワーズ。ヤケになるんじゃない」
低い声で果汁グミがサワーズをたしなめた。
「自分のことを選んでくれなくて不安になることもある。だがそこで焦らないことだ。気を引くためにイメチェンをしたり、整形したりしても相手は離れていくだけだ。ただじっと、じっと待つんだ」
サワーズは決心した。再び選んでくれる日まで、変わらずにいようと決めた。四角く硬く、生きていこうと決めたのだ。
月日は流れ、俺は22歳になった。最近はフェットチーネグミをよく食べてます。美味しいよね。
繰り返す。勘違いしないでほしい。俺はチョコレートさえ食べられればあとはなんでもいいのだ。