無敵の代償
友人たちと海に行った。誰一人として海が似合わないような友人たち。短歌会で出会って、まだ数回しか会っていないのに、かけがえのない友人たち。
遅刻した一人が、スケートボードに乗ってレンタカー屋の前にやってきた。その姿が滑稽すぎて誰も遅刻を咎める気になれない。彼は「移動手段として、歩くよりも速い」とスケートボードの素晴らしさを讃えている。スケートボードを移動手段にする新進気鋭の歌人を初めて見た(身近に新進気鋭の歌人が少ないだけで、もしかしたら他にもたくさんいるのかもしれない)。
ちょうど5人乗りの車を借りて(僕は運転要員として呼ばれたのだった)、大好きな音楽をかけて、ドンキホーテで麦わら帽子を買い、ダイソーでビーチボールやサングラスを買っていたら、もう午後になっていた。どうしてだろう、みんなサングラスがよく似合う。後部座席の治安の悪さがおかしくて、バックミラーで何度も何度も見てしまう。
ダイソーで買ったビーチボールはなぜか地球儀のデザインで、地面に落とすたびに「地球を救えなかった…」という気持ちになって可笑しい。スイカ割りをしようとスイカを買ったのに、割るための棒を持ってこなかったから、スケートボード乗りの新進気鋭の歌人が砂浜で流木を見つけてきてくれた。逞しい。この人たちと一緒にいると、自分が無敵になったような気がする。
帰り道、助手席に乗っていた一人が「わたしたち、もう車でどこまでも行けるようになったんだね」と言った。わたしたち、の平均年齢はももいろクローバーZとほぼ一緒で、とっくに車の免許を取っていて、社会にも出ている年齢だ。でもなぜか、何を今さらとは思わなかった。むしろうんうんと頷きたい気持ちだった。わたしたち、もう車でどこまでも行けるようになったんだよ。そして、もしかしたら二度と車でどこかに行くことはないのかもしれないな、と思ってしまう。
あと5ヶ月で23歳になる。こんな風に海へと行ける日がずっと続いてほしい。失いたくない、と思い続ければずっと手元に残ってくれるものだと信じていたい。ようやく人生のことがわかってきた。
それにしても、ふざけ過ぎている。