もう無理に言葉を相手の方向に曲げなくても良くなったって思いませんか。
一度物語になり損なったとしても、ずっと書き続けることができることを知っている。終止符さえ打たなければ。もしかしたら花屋の前で待ち合わせなんかしなくてもいいのかもね。いつどんな時でも目を合わせたら笑ってしまうのだし。
あの寒い夜の海を昨日のことのように思えていたのに、朝の海は眩しくて、暑くて、あの時先も見えない暗黒のなかに不安を隠すように笑っていた二人はもういないのかもしれない、って少しだけ思った。それは本当にいいことなんだよ。
ぼくたちは運命なのだから。絶妙なタイミングで好きな人ができて、いつだって誰かに愛されてしまう。どんなことがあっても、無敵じゃないけど最強だろ。魔法なら一生解けないまま、失わずに何度でも。僕はピエロじゃないし、君は恐れを知ってしまった。だけど、明日の朝も笑えるはず。
恐竜と星座をいっぺんにもらった日から、あのおばさんに肩を叩かれた日から、全部当たりのあみだくじを引いた日から、本屋で偶然出会った日から、傘で強く殴られた日から、高架下で言いたいことを探った日から、あのさ、わかる?本物だと思うんだけど、口にしたら消えてしまうよ、やめる?砂浜で見つけたメダル、あれは絶対にそうだよ、全部そういうことにしたい気持ちをずっと堪えている。
もう二度と乗り越えなくて良いもののために作った防波堤登る
砂浜にメダル あの夜僕たちが放った銃弾のごとく光る
轢かれそうであった、引かれそうだけど惹かれてしまう駐車場にて
落とし穴だと知っている これ以上楽しいことはないと知っている
誰しもがひとりぼっちにならぬようありとあらゆるダサい名のバス
頼りなき地球が波に攫われて愛の置き場を探すとしては
僕たちは何も変わっていなかった 揺れる毛先に獅子の面影