靴の先端が濡れている。
接触を封じられたら、ひたすらに言葉を空中に放るしかなく、その言葉がどこに落ちようと、誰を傷付けようと、僕は責任を持つこともしないのだった。幾多の街が滅びようと、僕の届けようのない思いが、現在のあなたに墜落することを祈っていた。
このような、非効率的で、残虐で、無価値で、愚鈍な意思伝達方法を取るしかなくなるのには、全て自分に原因があることはわかっていた。悪意の発信。僕にある明らかな欠落部分。不意に圧倒的な効力を持って、正確に相手の嫌悪を引き出すことがある。そして、誠に残念ながら、完全なる故意によって、自分から引き金に手をかけている。
それは、待てばじきに溶けるような氷を投げ付けるかのようであった。本当に意味が無く、物理的な痛みと冷たさを相手に実感させるだけの行為だ。しかし僕は、氷を溶かすことも、自分の熱を冷ますために使うことも出来なかった。
水溜まりに足を突っ込んで、それを思い切り蹴り上げる。自分の中で絶えず精製される氷のような悪意を、誰か噛み砕いてくれよ。もしくは、強く抱き締めて溶かしてくれないか。
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制限時間 1時間
テーマ 「氷」