そこが海ではないとして

This is the meaning of my life.

脳内放送

 

あー、米粒を踏んだ。べたべたする。床に足の裏がひっつく。ぺた。ぺた。取るのめんどくさいなあ。まあいいか。ぺた。ぺた。いや、気になるな。取ろう。片足を上げる。あれ。米粒なんて踏んでない。靴下に穴が空いている。かかとの部分。これか。あーあ。この靴下、わりと高かったのにな。まあ履き過ぎた。寿命だ。新しい靴下を買わなきゃな。春だし、機能性よりデザインを重視したものを。いや待てよ、デザインのいい靴下を買うのだったら、靴下が見えるように丈の少し短いズボンも欲しいな。しかしズボンって言い方はいくらなんでもダサ過ぎないか。パンツだろう。パンツ。でもなあ、パンツって言うと下着のことだと誤解されることがあるからなあ。丈の短いパンツ。ブーメランパンツ。いやいや。ズボンだとダサくて、パンツだとややこしい。帯に短し襷に長しとはこのことか。いやちょっと違うか。ズボンでもパンツでもない、新しい名称をユニクロあたりが流行らせてくれないだろうか。さてなんの話だっただろう、そうだ靴下を買うのだ。何色の靴下にしよう。春だし、橙や水色といった明るい色はどうだろう。おっと、そしたら今履いている靴に合わないな。そうだ、靴も新しく購入しよう。となると、靴下と、ズボンもしくはパンツと、靴、おや、下半身の衣服全てではないか。下半身大改造だ。下半身大改造って書くと何かいやらしいな。やめておこう。それに、下半身の全てではない。まだパンツが、すなわち下着のほうのパンツが…あーややこしい。いちいち下着のほうのパンツと、ズボンのほうのパンツ、みたいに先に注釈をつけておかないといけないなんて。というかズボンのほうのパンツと言うのなら、それはもうズボンではないか。ズボンでいいんじゃないか。しかしズボンと呼びたくないお年頃。スパゲティーのことをパスタと呼び、チョッキのことをベストと呼ぶ、例のあれだ。かっこつけってやつだ。素直にスパゲティーと呼べばいい。素直にチョッキと呼べばいい。素直にズボンと呼べばいいのに。しかしもう僕らは人前でチョッキなどとは恥ずかしくて口に出せまい。ましてやズックなど。ところでズックってわかりますか。僕らの地域では上履きのことをズックって呼んでいた。小中学校で履いていたあれだ。しかしあのズックってやつ、ズックにピンと来てない方は上履きをイメージしてもらっていいけれど、やけに悪臭を放っていませんでしたか。毎日履いてるのに全然家に持ち帰って洗わない奴がいるんだよな。どんどんボロ雑巾と同じ色になって、腐った臭いがしてくる。その臭いが下駄箱なんかにも染み付いちゃって、だから下駄箱のあたりって本当に臭かった。あそこの前を通るたび、学校が憂鬱になったものだ。そんなことより俺の下半身大改造計画の話の続きをしよう。靴から靴下からパンツ(ふたつの物質を包括している)から、全てを取り替えてしまおうじゃないかと思うのだけれど、さて、ベルトは下半身に入るだろうか。これは人による。人によっては、ベルトをバリバリの上半身に巻きつけている場合がある。年配の方に多い。反対に、かつて腰パンなるものが流行ったとき、若者はベルトを当たり前のように下半身に巻いていた。僕はどちらでもない。中間派だ。中間ベルトだ。もはやベルトを中半身に巻きつけていると言っても過言ではない。だが考えてみてほしい。もし人間の身体を三等分し、上半身、中半身、下半身と分けるとしたならば、下半身の下半身たる所以の部分は中半身に位置付けられるではないか!その場合、下ネタは中ネタに変わる。「あたし、中ネタNGなんですー」って言いながらしっかり聞いている女も増える。看護師は老人のナカのお世話をする。あ、それはそれだな。それはそれだ。うん。とにかくベルトも買おう。街に出よう。俺の下半身、いや、中半身下部から下半身にかけての改造計画がいざ始まる。ってめちゃくちゃややこしいな。