そこが海ではないとして

This is the meaning of my life.

家族が増えて嬉しいね

今年の夏は妻と一緒に、自分の母方の実家に行った。結婚したらすぐに母方の実家に行くと決めていた。

母方の実家は山形県長井市にある。子どもの頃はお盆の時期に家族で毎年泊まりに行っていた。大人になってからは行かなくなってしまい、自分が長井市に行くのは6年ぶりだ。盛岡から車で仙台に向かい、母と弟と合流して、4人で山形に向かった。

母方の実家に行きたかったのは理由があった。長井市には黒獅子舞という1000年近い歴史のある伝統神事がある。それをどうしても妻に見せたかったのだ。

長井の黒獅子は異様な姿をしている。普通の獅子舞とは明らかに違う。長井の黒獅子は10数人くらいで操るので胴体が大蛇のように長い。顔は赤ではなく黒くて、とても大きい。目玉が飛び出ていて、鼻毛とたてがみが顔を覆い隠すほどに伸びている。

お盆の時期になると、長井市の各地区で黒獅子がそれぞれ町内を練り歩く。そして氏子の家を回ってはお酒を飲む。地区によってやや風習が違うのだけれど、母方の実家のある地区は特にお酒が大好きな黒獅子がいる地区で、べろべろになった黒獅子が夜中2時過ぎになってもまだ町を練り歩いている。お囃子の太鼓と笛の音も深夜遅くまで鳴り響いている。それをみんなでぞろぞろとついていって見に行く。ただ観光しただけではわからない、「地元の祭り」感が子どもの頃から好きだった。

コロナウイルスの影響で帰省を控えていた従兄弟たちも久しぶりに山形に帰ってきていた。3歳下の従弟は今年結婚したばかりで、配偶者を実家に連れてきていた。「やっぱ結婚したら、獅子見せたくてさあ」と従弟が言った。

黒獅子を見る妻を見て、結婚して良かったなと思った。

今年の頭に祖母が足を悪くして手術をした。以前のように畑仕事ができない祖母の代わりに、伯父が畑を守っている。トマトもきゅうりもたくさん採れるというので、早起きして妻と2人で収穫作業を手伝うことにした。

妻の祖父母宅も畑を持っていて、手伝うことが多かった妻は慣れた手つきでトマトを捥いだ。バケツ2杯分くらいになったトマトを見て、「結婚するっていうのは、捥いでいいトマトが増えることなんだね」と妻が言った。

母は3人姉妹で、祖父母はそれぞれもっと多い数の兄妹がいて、祖母は家にたくさん人がいる環境でずっと暮らしていた。今はこの家に祖母と伯父と伯母の3人が暮らしている。お盆になるといつもは使っていないテーブルを運んできて、たくさんの人でたくさんの寿司と揚げ物を食べる。食べた後はテーブルを片付ける。

久々に祖母と2人でゆっくり話をした。祖母は寂しいと言った。また来るね、と何度も言った。

妻と母と弟を車に乗せて山形から仙台に戻った。母は仙台で父と暮らしていて、弟は埼玉で一人暮らしをしている。僕は盛岡で妻と暮らしている。

お盆が終わって、弟が「家族が増えて嬉しいね」とツイートしていた。僕はその言葉をInstagramのプロフィール文にした。