そこが海ではないとして

This is the meaning of my life.

架空の町

小学生の頃、自由帳めいっぱいに架空の町を書いていた。住宅はなくて、大きなお店ばっかり作っていたので、郊外のパイパス道路みたいだった。見開きを貫くように大通りを書き込んで、スーパーや家電量販店なんかがぼくの発想次第でどんどん建っていく。ページのだいたいが埋まったら、次のページに道路をつなげて、また架空の町を広げていく。時には自由帳一冊分の大きな町ができることもあった。次はどんなお店を作ろうかを考えるだけでうんとたのしかった。見開きをすべて使ってしまうほど大きなショッピングモールの建築を思い立った時は、良い施設ができるかどうか不安でとにかく緊張した。ほかのみんながかわいいキャラクターや似顔絵を描いている中で、ただひたすら町を作っているのがなんだか恥ずかしくて友だちには決して見せることはなく、歳を取るごとに恥ずかしさが増して、たしか小学校高学年になったくらいで書かなくなってしまった。あの町はどうなっているのだろうとたまに考える。スーパーが潰れたり、大きな商業施設ができたりして、いまも広がり続けているかもしれない。スーパーのとなりにスーパーがあるいびつな町。ページをつなげて書くから、ひたすら横長くなる僕だけの架空の町。