そこが海ではないとして

This is the meaning of my life.

本当の人

 

薬をよく飲み忘れる。食前に飲む薬なのだけれど、気が付いた時には食事が終わっている。薬を飲む習慣のない僕にとって、食前に飲む薬の忘れ去られ率の高さはほぼ9割といっていい。次は必ず食前に飲むぞと意気込んだ次の食事の前にすら忘れる。まさか病気を治すための薬の服用によって病が可視化されるとは。頭の悪いことわざか?外に出たら元気になるけれどあんまり屋外にいる用事はない。というか室内にいないと進まない作業ばかりである。いろんな意味で早く家に帰りたい気持ちをこらえて散歩している。これはこれで不健全な気がしている。

診察はほんとうにあっという間に終わって、病院には2週間に1度通うことになった。長期戦だろうと思う。良くなるのなら構わないのだけれど、前に進んでいる気がしないのはなんとなくつらい。前がどっちかわからないなりに進む。趣味と趣味の組み合わせがうまくいかない。テレビを見ているときに同時にラジオが聴けたり、動画を編集しているときに本が読めたりすればいいのに。2倍速でバラエティ番組を見ながら考えることは、時間は本当に有限であるということと、有限なわりには長いということである。ラジオを聴いているときは散歩かゲームかしかできないので、すきなラジオが増えるたびに散歩とゲームの時間が増えていく。もしくは趣味をすべて捨てられたらいいのになとすら思う。すきなものは無限増殖的に増えていき、それら全てを捕捉するのはどんどん難しくなっている。追えない苦しさ、見られない苦しさよりも、日常がちゃんと楽しくなってくれたほうが良いのに。

健全とか正常とか普通とかについて考える。病院の先生は僕にこう質問した。「あなたはなにかに熱中してついつい夜更かししてしまうとか、夜通しやってしまうようなことはありますか?」僕は答える。「まあ人並みにはあるかと思いますが……」先生は言う。「いいや、普通の人はそんなことにならないんだよ。人並みなんてないの。普通の人は夜はすぐ寝るの」

このやり取りについてずっと考えている。普通の人は毎日決まった時間に、日付が変わらないうちに寝るのだという。夜を徹して何かに熱中することはないのだという。そうかあ。