「とりあえず必死に勉強してたけどセンター試験のセンターって何?」
あまりにも今更すぎる、と言いかけて口を噤んだ。あれ、なんだっけ。
「調べてよ」
「おう任せとけ」
僕たちは大学四年の冬を迎える。
分厚くて赤くて重いあの本の表紙に書かれた名前の場所は、今だって忘れずにいる。「行きたい」が「行きたかった」に変わっただけだ。正解の数が足りない。人生を誰も添削してはくれない。
iPhoneでいとも容易く正解は導き出せる。
「大学入試センターという法人による試験、略して」
「センター試験」
「正解」
「ちなみにさ、どんな意味だと思ってた?」
「世界の中心」と彼は言った。
「センターで良い点取れば中心に行けるシステムみたいなものよ」
わからないけれど納得してしまう。田舎のファミリーレストランにて。
人生はセンター数学。問一で転べば全て間違いになる。そんなこと、気のせいだとも知っているけれど、なぜだか取り返せない。
東京に行くはずだった。
もう思い出せない何かになるはずだった。
中心を忘れるほどに黒く塗り潰してしまえ俺の青春
これ、「短歌条例」という、物語を57577で書くというルールに則って書きました。作るの楽しかったー!みなさんもぜひ!