そこが海ではないとして

This is the meaning of my life.

僕はTHE EMPORIUMの女性に財布を握られている

僕は今の財布を3年程使っている。緑色の長財布である。

これはTHE EMPORIUMというお店で買った。ガチガチのレディースアパレルブランドだ。僕が使っている財布は、言ってしまえばガチガチのレディース物である。

THE EMPORIUM(ジ・エンポリアム)|株式会社ワールド(WORLD)

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つまり僕は女性に財布を握られているということにならないでしょうか。

 

 僕の中に潜んでいた、女性に財布を握られたいという欲望

さいふをにぎる【財布を握る】
金銭の出し入れを管理する権限を握る。

大辞林 第三版より

以前は男性物の財布を使っていた。しかし、日々の消費の内に湧き上がる欲望が、僕をTHE EMPORIUMに走らせたのだ。

 

「女性に財布を握られたい」

 

多くの男は自由でありたいと思う一方で、何かに守られたい、甘えたいという感情も有している。強く生きる為にも依存先が必要だ。

ここで求めるのは、「ささやかな束縛」である。僕が何かを買い求めたいと思う度に、緑色の長財布、もとい緑の女性が僕に口出しする。

 

「財布と相談する」時に、僕は女性と相談している

「財布と相談する」という日本語がある。

意味としては「購入可能かどうか検討する」というもので、実際に無機物である財布に面と向かって「相談」している人間はいないだろう。

 

しかし僕は、財布と相談している。正確に言うと、女性と相談している。

 

「これ買おうと思うんだけど、どうかな」

「そんなもの必要ないわ。私がどんどん寂しくなってしまう」

「そうだな…」

 

大きな買い物をしようか悩むとき、家族でも友人でもなく、僕は真っ先に緑の女性に相談するだろう。そして、僕は寂しくなってしまった財布の姿、いや女性の姿を思い浮かべる。女性は僕のそばからいつも離れずにいてくれる。彼女に対して僕が出来ることはなんだろうか。ささやかな束縛によって、僕の出費は抑えられる。

 

財布は毎晩男(たまに女)と寝ている

僕は緑の女性のことを深く愛しているが、緑の女性には僕よりも好きな男がいる。

 

諭吉だ。

 

緑の女性は毎晩諭吉を抱いて眠りたいと思っている。一度諭吉と出会えば、絶対に離さないといった具合に諭吉を抱きかかえる。数人の野口など歯牙にもかけず、諭吉ラブ、諭吉最高、なんて囁きつつ夜を過ごしている。

諭吉がいない夜は数人の野口と乱交したり、たまに訪れる一葉とレズプレイを楽しんだりと奔放な振る舞いを見せる豹変ぶりが僕は怖い。

 

僕は諭吉に嫉妬する

諭吉にしか見せていない顔を、僕にも見せてほしい、そう思う日もある。

だから時折、大胆なことをしてしまう。

 

「あなたやめて!それを買ったら、私はすごく寂しくなっちゃうわ!」

「うるせえ、お前は俺のものになるんだよ」

 

店員「9800円になります」

「10000円からでお願いします」

「そ、そんな…」

 

女よ、誰でもいいのか

その夜、僕は購入したロングコートのタグをハサミで切って、一通り鏡の前で合わせたあと、風呂に入り、支度を済ませ、緑の女性と布団に入る。

 

「さあ、今日は僕と寝てもらおうか」

 

僕が財布を開いた瞬間、目を疑った。

 

「ねえポンタ…もっとやさしくして…」

「んほっ…」

 

緑の女性はポンタと肌を交わしていた。化け狸め!

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