そこが海ではないとして

This is the meaning of my life.

わからなくてもだいじょうぶ 卒業旅行②

卒業旅行① - そこが海ではないとして

朝の9時に出て昼の15時に着く高速バスに乗った。こんなに真昼間に走る高速バスに乗るのは初めてだった。さすがにやることがないかなと思っだけれど、Wi-Fiがあるから全然退屈しない。NetflixとPrime VideoとDAZNを往復したらあっという間に東京だった。

消灯されてしまう夜行バスは苦行だ。ただじっと眠気を待つしかない。それに比べて、昼に走るバスのなんて自由なこと!そして、見えてくる東京!ここからの僕はずっと思い浮かぶすべてに「!」が着いていた!東京!

何時間も履いていたスキー靴を脱いでお風呂に入るときみたいに、抑え付けられていた感情が一気にはじける。わあ!ここは私の東京!愛しき東京!

 

バスは満員でも3列シートは快適だ。バスタ新宿と大崎駅に停車するのだけれど、今日は全員バスタ新宿で降りるのだと運転手がアナウンスで言っていた。大崎駅をご利用の際はお申し付けください、と。それを聞いて急に大崎駅に降り立ってみたくなった。実は宿泊先は大崎駅に近く、そっちの方が便利でもあった。急な心変わりを丁寧にお詫びしつつ、大崎駅で降車したいことを告げる。快諾。ありがとう。バスタ新宿から大崎駅まで、僕だけのバスが走っている。都心を駆け抜けるピンクのバス。

 

大崎駅で降りる。運転手さんにお礼をすると、「このあたり土地勘あります?大丈夫ですか?」と聞かれた。「土地勘はないですけど大丈夫です!Google Mapがあるので!」と答えた。本心だ。Google Mapがあればどこへだって行ける。五反田へ向かう僕に、この階段を昇ったら早いよと教えてくれた。どこまでもやさしい運転手さん。

初めて降りた大崎駅はなとても魅力的だった。びっくりした。大崎駅で感動するのは田舎者すぎないかなと思ったけど、田舎者だからしかたない。大崎駅はいい。ビルがたくさんあるのにどこか無機質で、その飾らなさがいい。地味なことを気にしているのだろうか、急にフットサル場があったり、駅前でイベントをやっていたりするのもいい。ないものがたくさんありそうでいい。歩いて五反田へ向かった。さよなら大崎駅。五反田はごちゃごちゃしていた。それも好きだけど。

 

荷物を預けるため宿泊先にチェックイン。iPadでサインを書くのだけど、タッチペンがなくてまごついた。不審そうに宿の人が僕を見ている。僕は指先の皮膚が薄くて弱いので、タッチパネルをなぞると痛くなってしまうから、タッチペンなしで文字を書くのが苦手だ。同じ理由でスマートフォンも指の表面ではなくて爪でタッチしているから、僕がスマートフォンを操作するとカチカチと鳴る。こんな人はあんまりいないだろう。スマホからカチカチと音が鳴っている人は僕以外に見たことはない。

皮膚が擦れるたびに指先を離してしまって、サインがうまく書けない。宿の人は「手首がタッチパネルに触れてませんか?そっちが反応してしまって書きにくくなってません?」と聞いてきた。そうじゃない。手首は触れていない。うまく説明できる気がしないけど、「皮膚が弱いんです」と言った。「はい?手首がタッチパネルに触れてませんか?」同じことを言われて困ってしまった。きっと伝わらないだろうけど、なんとか説明しようと思った。「皮膚が弱いので、タッチパネルをなぞれないんです。」宿の人はわかったようなわかってないような顔で、あとはもう何も言ってこなかった。

 

伝わってほしいことと、そうでもないことがある。皮膚のことは後者。諦めてるわけじゃなくて、みんなに広めたいわけでもなくて、わかる人がいたらおもしろいなーと、試すような感覚でたまにこんな風に書いている。わかったらうれしい。わからなくてもおもしろい。こんなこともあるんだよ。宿の人を困らせてしまって申し訳ないなあと思いながら、山手線に乗って渋谷に向かった。

 

リュックとクスクス 卒業旅行③ - そこが海ではないとして

 

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