そこが海ではないとして

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第4回 大学短歌バトル2018ー学生短歌会対抗 超歌合 の感想

大学短歌バトル2018を見ました。面白かったです。色んな角度から感想を書けるな、書きたいな、と思っていたのですが、とにかく良い歌が多い…ということを一番に感じたので、大会で披露されなかった歌も含めて、各短歌会あるいは個人のTwitterで公開された歌を引いていこうと思います。

この文章が短歌バトル参加者の方々にも読まれる可能性があるのでまず自己紹介をすると、

詠み手としては

・短歌会に所属してましたがほとんど短歌は作ってないです

・短歌同人誌「かんざし」第3号に参加しました

その他の情報として

短歌甲子園なども含めて「歌合」を初めて見ました

・最近やっと詩集を買って読み始めた程度です

・歌をブログで引くのは今回が初めてです

というくらいの人間が書いた感想文なので、息抜き程度に読んで頂けると助かります。

それと同時に短歌にあまり慣れ親しんでいない方も読むと思うので、「大学短歌バトル2018」って何?みたいなことを最初に軽く説明します。予選を勝ち抜いた8つの大学短歌会がトーナメント方式で2チームずつ対決し、各チームがお題に沿った短歌を詠んで、先攻と後攻に分かれて自チームの歌の良い点を指摘し、相手の短歌を批判し合います。それを受けて判者(審査員)がどちらの短歌が良かったか判定し、先に2勝したほうが次の試合に進みます。もっと詳しいことは

【学生歌人の競い合い】第4回 大学短歌バトル2018ー学生短歌会対抗 超歌合 - 2018/03/03 11:30開始 - ニコニコ生放送

に書いてあります。角川が主催しているのでニコニコ生放送で見られます。プレミアム会員だと録画視聴できます。僕はプレミアム会員ではないのですがもう一度見たいので課金したくなってきました。

さて、ここから良かった歌の感想を言います。評じゃなくて感想です。大会で詠まれたけれどTwitterで探せなかった歌は載せていません。北大短歌の岐阜亮司さんの歌がめちゃくちゃ良かった気がするのだけれど探せなくてかなしい。

 

【ラスク】

生きてさえいれば 無人の円卓のラスクのざらめがはなさぬ光(武田穂佳)

「生きてさえいれば」ってめちゃくちゃ強い言葉ではじまって心を掴まれるんですけど、ラストまでその強度を失わずに綺麗なまま終わってるのが凄いです。目線が前半だけに向かないというか。この歌には勝てないだろう、みたいな雰囲気がありました。この歌でも負けることがあるのが短歌バトルの面白さでもあり、難しさでもあるなあと。無人「の」円卓「の」ラスク「の」ざらめ、で「の」を3回重ねていくところが本当に好きです。望遠カメラのズームみたいにどんどん寄っていく感じ。人の生死からはじまって、ラスクのざらめの光にまで寄っていく。ズームした結果の「光」が最初のテーマである生死から全く離れていない。武田穂佳はすごい、と何度でも言っていこうと思います。

 

【蹴】

蹴、蹴、蹴る、蹴る蹴れ蹴よとないているすてきな蛙おしよせる梅雨(番澤芹佳)

カ行上一段活用を蛙の鳴き声に見立てる発想だけで、もう素晴らしいなと思えました。「おしよせる」もわかります。高校生が暗唱してる姿が目に浮かぶ。あえて言えば、「すてきな」を別の言葉に言い換えたいかもしれないし、ちょっとひらがなが多い気がする、など。「ないている」「蛙」「おしよせる」が全部「る」で終わって語感がいいですね。

 

【スーツ】

世界のための私のためにスーツ屋はスーツしか置いてなくてありがとう(岩瀬花恵)

本戦で出せなかった歌。題詠「スーツ」ではどこか後ろ向きな歌(労働いやだな、画一化いやだな、みたいな)が多かったので、これが出せてれば強烈に良かったんじゃないかなあって思います。破調に勢いもあるし。

 

【少】

美少女にずっとならない妹をそれでも駅まで送ったりする(長谷川麟)

生活~!!!って思いますね。評価が分かれそうだなあと思ったし、現に生放送のコメント欄では、妹が「美少女にずっとならない」と断じることを不愉快に思うかどうかで盛り上がってました。この歌から僕は、兄はめちゃくちゃ妹のことをかわいいと思ってるんだな、と感じましたが、そうではない感想もあっていいと思います。かわいいと思っているのなら「それでも駅に送ったりする」という部分は読者にどう読ませたいかが微妙だ、とか、「ずっとならない」「それでも」「送ったりする」などの表現をどう思うか、とか、読み手にかなり依存する歌のように思えます。個人的には好きです。美少女「ではない」じゃなくて「ずっとならない」と詠むのがいいなあと思いました。

 

【櫛】

会えないなら死んじゃったのと同じじゃん濡れてる髪に差し入れる櫛(乾遥香

 

呟いているような前半部分と美しい後半部分が、表現としては全然違うのにほとんど同じ種類の熱を持っている、という点に驚きました。どちらもより良く書くことはできるけど、組み合わせるならこの表現が最適、みたいな。乾さんは念人(批評家)としても素晴らしい活躍をしていたと思いますが、進めなかった決勝にこんな良い歌を残していたとは!という気持ちです。過去の作品も見てみたらめちゃくちゃ良かったのでTwitterをフォローしました。

 

【一】

しりとりの速度で街は暮れてゆく一人で生きていけぬ喜び(岩瀬花恵)

好きです。すこし綺麗すぎるかな、わかりやすすぎるかな、とも思いますが、押し切る力があります。押し切る力とは何かというと、「暮れてゆく」「一人で生きていけぬ」などの一見すると暗い言葉をすべてひっくり返す「喜び」のことです。岩瀬さんは結果的に2首引いた形となりました。なんか無視できないパワーがあるんですよね。素敵です。

 

【鬼】

鬼が棲む、つまりは鬼が死ぬ洞のまわりにずっとまく花の種(阿部圭吾)

優勝した早稲田短歌会のエキシビジョンでの歌。取りざたされたのは鬼は死ぬかどうかという問題ですけど、鬼は死なないんですよね。そうすると、「つまりは」という部分の評価が難しい。でも、そういう理屈は抜きにして、「鬼が死ぬ洞のまわりにずっとまく花の種」というフレーズの綺麗さに心を打たれました。阿部さんは他の歌もとても綺麗でよかったです。

 

こうやって歌を引いていくと好きな歌の傾向がわかってきて楽しいですね。感想じゃなく評を書けるようになりたいものです。ちなみに大会一のパンチラインは「作者の思い入れとかではなく歌の話がしたい」と言い放った乾遥香さんです。かっこ良かった。。。

 

 

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