そこが海ではないとして

This is the meaning of my life.

叙々苑

 

反対側のエスカレーターに乗っていた女子高生3人組のうちの1人が、あー叙々苑食いてえ!と叫んでいた。他の2人が、わかるー!と女子高生特有の同調言語を発している。なんか肉食いたいんだよね!肉!と続ける。わかるー!が飛び交う。わかってたまるか。叙々苑だぞ。俺の記憶が確かならば、それなりに良い肉がそれなりの値段で用意されていて、うおー肉食いてえ、という邪心丸出し女子高生があっさり飛び込んだら怪我をする可能性があるはずだ。肉が食いたいなら、牛角に、焼肉キングに、行け。女子高生3人組は上階のレストラン街に消えていったので、もしかしたら叙々苑に行ったのかもしれない。でも叙々苑行きてー!わかるー!

それにしても、俺が女子高生に対して、わかるー!と口にする日は、もう二度と来ないのではないだろうか。そんな軽々しい言葉遣いを女子高生に対して許される立場ではないし、第一女子高生がリアルタイムで言っていることがわからなくなりつつある。女子高生はもう街中のチーズダッカルビを食い尽くしてしまって、インスタ映えさせられる景色はすべてインスタ映えさせてしまって、それらは過去のものとして、最先端の別の何かを追い求めているはずだから。女子高生と会話してわかるー!って言いたい。今日も僕は世の中のことが少しずつわからなくなっている。

 

財布を買い替えたくていろいろ探し求めていて、ついにお気に入りのデザインのものをインターネットで見つけた。シンプルだが他にはない、美しいフォルム。欲しい。最終確認のため、実店舗に現物を見に行く。ところが、思っていたのと違う。確かにデザインは良い。けれど、なんだか薄い。薄いというか、弱そうだ。明らかに弱い。これで人は殴れない。そもそも財布では人を殴ってはいけないのだが。財布じゃなくてもそうだが。要するに心許ない。ここにお金を入れても、守られている感じがしないし、レシートを入れたらすぐにパンパンになってしまいそうだ。財布を探すときに大事なことは2つある。1つはデザイン。そしてもう1つは、人を殴れそうかどうか。

もう既に人々の共感を得られそうにないのだが、さらに続ける。当然なことだが財布を買うためにはお金が必要だ。ちなみに欲しいと思っていた財布は3万円くらいする。財布を買うのに財布の中身がなくなってしまうのが許せない!納得いかない!は?何言ってんの?と思いましたか。もう一度書きますが、財布を買うのに財布の中身がなくなってしまうのが許せないと思っています。財布の中身とはお金のことです。俺は今の状態で新しい財布を迎え入れたいと思っている。現金がバリバリに手元にある状態で。それなのに、財布を買うとしたら、バリバリ手元にあった現金がなくなってしまって、新しい財布の中身が寂しくなってしまうではないか!せっかくの3万円の財布がすっからかんでは切ないではないか!書いてて自分でもよくわかりませんが、とにかく財布に高いお金をかけたくないという話。わかるー?女子高生に聞いてみたい。たぶんわからないと思う。とりあえず財布にお金かけるなら叙々苑食いてえ。