そこが海ではないとして

This is the meaning of my life.

世界恐慌

 

世界恐慌が起きる夢を見た。

 

どうしようもないくらい世界恐慌はこわい。どうしてこわいのか。僕は世界恐慌を歴史の教科書で知ったのだが、教科書に書いてあった世界恐慌は、その悍ましい名称や当時の悲惨な写真、そして顛末とは裏腹に、歴史の教科書レベルの薄い記述をどう読んでいっても、当時の理解力では、どうして世界恐慌が起こったのかが全くわからなかったからである。

大学に入り、社会の仕組みや経済の仕組みを学び、世界恐慌についてもかつてよりは知識を得た。それでもなお、世界恐慌はおそろしいものとして、僕の頭の中にインプットされ、悪夢として僕を襲った。

 

手元にある山川世界史(高校の教科書)を開いて読む。ここからは、教科書に書いてあることだけで話を進める。前提として、1920年代のアメリカは共和党政権下で「永遠の繁栄」と呼ばれる好況期を迎えていた。アメリカは第一次世界大戦中に連合国に物資・借款を提供したことで大きな利益を上げ、「債務国から債権国へ転じ、国際金融市場の中心となった(ここ、めちゃくちゃマーカー引いてある)」。戦後は国内市場を高関税政策によって守り、世界の富がアメリカに集中した。男女平等選挙権の実現による民主主義の基礎の拡大、大衆娯楽の発達など、まさにアメリカこそが世界の中心になったのである(当然すぎることだが、19世紀末までは世界の中心は欧州であり英国だ)。

ところが、あれだけ繁栄していたアメリカが、突如として、世界恐慌に襲われる。事実はそうではないかもしれないが、少なくとも教科書レベルでは、あまりにも唐突に世界恐慌がやってくる。山川世界史321ページで世界は一変してしまう。暗黒の木曜日、労働者の4人に1人が失業、工業生産の急落(1929年の約6割の水準まで落ち込む)。恐慌の発生背景として、世界的な農業不況が起きたこと、高関税政策や賠償・戦債支払いが国際貿易の流れを妨げたこと、合衆国に集中した資金が土地や株式への投機に使われたこと、などが記載されている。

経済の仕組みを全く学んでいなかった高校生時代の自分は、この恐慌の原因がうまく掴めなかった。そしてこの世界恐慌ファシズム化を引き起こし、第二次世界大戦に繋がっていく。世界恐慌の恐ろしさは戦争に直結することだろうと思う。教科書では、世界恐慌から第二次世界大戦への速度が異常に早い。日本、ドイツ、イタリアが経済危機により行き詰まり、対外侵略を進めていく流れの悲惨さ!(日本は他の資本主義国に先駆けて高橋是清財相の下で景気回復をしているが、これは日本史の範囲だ)

 

思うのだが、高校の授業では世界恐慌を「ただただ怖いもの」として教えている。恐慌の原因や詳細よりも、その後の各国の対応や政策に重きを置いて説明されている。歴史の授業であるからして当然ではあるが、かといって各国の対応の「正解」もわからないまま戦争に突入してしまうから尚更怖い。1番怖いのは、1929年に恐慌が起きてから1932年にフランクリン・ローズヴェルトが大統領に就任するまでの間、具体的な金融政策が「フーヴァー・モラトリアム」以外に記述されていないことである。スムート・ホーリー法などは無かったことにされている。また、アメリカが各国の不況を拡大させた事実はほとんど記載がない。ニューディール政策は教科書では「政府の強力な権限で経済を指導し、社会対立の拡大を阻止して、国民をおちつかせた」とあたかも大成功に終わったかのようにあるが、実際には1930年代後半に再び不況を迎えている。

世界恐慌に対する僕たちの成す術の無さ!フランクリン・ローズヴェルト指導力によってアメリカは復活し、第二次世界大戦戦勝国となった、という簡素な説明の恐ろしさ!この間の世界の対応について覚えることが異常に多い中、12年も大統領を務め上げたフランクリン・ローズヴェルトには感謝しかないが、世界恐慌はひたすらに怖い。特にオチとかはないです。