そこが海ではないとして

This is the meaning of my life.

マックからモスへ進化する男

 

高校時代にマクドナルドでバイトをし、大学時代にモスバーガーで働いていた。

これを「進化」と称して笑いを取りにいくのが、僕の常套手段である。マックからモスへの進化。

 

人類は進化しているのだ。赤から緑へと。白塗りの顔の道化師を店の前に座らせるような下品な真似はもうしない。緑になった人類は、何気ないバンズ(パンのことだ)と肉だけの空間に、これでもかとレタスやトマトなどの野菜を挟むようになる。出来上がったハンバーガーを包み込むようにラッピングするのは原始人のやり方だ。木製っぽいカゴにそっとハンバーガーを乗せる。

赤い原始人がスピードを重視するのに対し、緑の崇高なる人種は照り焼きチキンをゆっくりと焼き上げる。あまりにもゆっくりと焼き上げるので、本当に注文が通っているか心配になるくらいである。

 

厨房内で使用する言語も全く異なる。というか、赤い原始人たちの会話は基本的に日本語ではないので、我々日本人には聞き取りが不可能である。

「アイドルだしクレンリネスして!抗菌どこ?」

「フォーワン全部ウェイトで!」

「アップする前にサンキューボックス見てきてね」

これらに関して、マクドナルドの発祥地由来の用語であるかというと、そうでもない。なんだよサンキューボックスって。(店内にあるゴミ箱のことです)

 

もちろん、看板商品であるハンバーガーの製造過程も異なる。

赤い原始人は、ハンバーガーを台に置いて作る。ピーク時にはひとつのハンバーガーを5人がかりで作っている。先頭の1人はイニシエーターと呼ばれ、注文が入ると即座にバンズを焼き機に入れる。イニシエーターはひたすらバンズを焼くだけの仕事だ。だったら他の呼称があるような気がするのだが、あくまでイニシエーター(発起人)なのである。

イニシエーターの隣の人はラップを台に用意する。ラップを台に用意するだけの役割の人がいることが滑稽である。残りの3人はアッセンブラーと呼ばれ、ソース、野菜、肉を乗せてハンバーガーは完成する。

 

ソースの塗り方も違う。緑の崇高な人種は、スプーンなどを使って丁寧にパンにソースをかける。しかし。赤い野蛮な原始人は銃のようなものを手にし、パン目掛けてソースを発射するのだ。ピーク時に厨房は無数の銃声音が聞こえる紛争地帯と化す。パンは次々と殺され、ラップで強引に包まれ、ぺちゃんこに潰された状態で我々の元へと届く。
マクドナルドの店員があそこまで笑う理由を知っているか。本来、スマイルはタダじゃない。あれは嘲りのスマイルだ。殺戮対象になったハンバーガーを注文する客に対する嘲笑だ。

 

対して緑の崇高な人種は、バンズを決して台に置かない。手の上でハンバーガーを作るのだ。効率を考えるならば、台の上に置いたほうが良いかもしれない。しかし、彼らはハンバーガーを我が子のように手で扱う。

「やあバンズ、今日も焼きたてだね!」

「お店の厨房で毎日仕込んでいるトマトだよ!」

「ほおら、高い高ーい!原価が高い高ーい!」

 

君たちはマクドナルドとモスバーガーの違いを、ちょっと値段が違うだけ、としか認識していないかもしれない。それは大きな間違いである。マックが出すのは殺された獣のようなハンバーガーであり、モスが出すのは真心込めて育てられた我が子のようなハンバーガーなのだ。

 

嘘です。どちらも大好きですし、バイトして分かったのですがどちらも大差ありません。ちなみに僕は、手の上で作るモスバーガーの特殊な製造過程に慣れることができずに退職しました。

 

 

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