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何卒最低

This is the meaning of my life.

社会的鬱結

仙台駅

新幹線に乗る。あたたかい。

窓際の指定席を取ったはずなのにそこには50歳くらいの綺麗なおばさまが座っていて、でも清潔感のあるおばさまだったし、びっくりするほど自然にそこに座っていたので、注意する気が起きなかった。通路側に座る。快晴だな、と少しだけ窓を覗き込む。

それにしてもこんなに便利な乗り物があって良いものか。対して高速バスは週末になると4500円になったり頭に耳をつけた集団が大量に乗ってきたりする。不快指数が高い。倍の値段を払ってでも新幹線に乗るのは無駄なことではないような気がする。体にも優しく、移動時間は3分の1。

グミを噛みながら、これからどうしよう、なんてゆったり考えているうちも、僕の体は猛スピードで移動している。

 

白石蔵王駅

子供の頃からの疑問だけれど、新幹線駅の選定基準がわからない。確かに白石は県南随一の都市だけれど、それにしたって東北本線と接続もされていない駅を誰が使うというのだ。

新幹線にぼんやり乗っていると県境がわからない。あのトンネルがそうだよ、とか教えてくれる人が隣にいると嬉しい。いないので、ずっとわからないまま気付いたら福島に入っている。

ポケモンの街は良い。都市と都市の間で雰囲気がガラリと変わって、建物も道路もまるで違う。そういう、いつもと違う何かが旅先にあると嬉しい。現実には、どこにでもあるセブンイレブン、どこにでもあるヤマダ電機、似たり寄ったりのパチンコ店、などなど。

窓の外を見ると、2ヶ月前に原付で走った風景が見えた。なんでこんなところまで来たんだ?あの時の僕に聞いてみる。まだちょっとだけ思い出せる。いつか思い出せなくなることを知っている。

 

福島駅

福島にはよく来るが、駅前を歩いたことがない。今度ゆっくり歩いてみたいなと思う。盛岡駅前と山形駅前はもう庭のようなものだ。秋田駅前は一度だけ歩いた。この4年で僕は色んな街を知った。行動範囲が広くなるほどに、なぜか少しだけ寂しくなる。この街のどこを探しても、僕を知っている人はいない。

つばさ号が繋がれる、とのことで少し停車。いつ接続されたかわからないまま発車。

こんなに目の前で、こんなに大きなことが、気付かないうちに終わっている。僕はいつだって鈍感で、たくさんのことに気付かないでいる。気付かないことに怒る人、憤る人、嘆く人、そして期待に応えられず落ち込む僕。そんなことを繰り返してる。 

福島駅の周りは、山と山の間に低い建物がぎっしりと詰め込まれていて、よくできたジオラマのようだった。同じような2階建ての家が並んでいるのに、みんな間違わずに自分の寝床に辿り着けるのが不思議だ。いや、本当はみんな毎日不安なんじゃないか?今日は間違わずに帰れただろうか、別の家族が住んでいないだろうか、なんて。

長いトンネルに入るとお腹が痛み出した。特に因果関係や暗喩はない、ただの事実。空きっ腹に炭酸飲料を入れると必ず僕は腹痛になるのに、何度もそれを繰り返しては苦しんでいる。馬鹿じゃないの、と言いながらも心配してくれる君はもう隣にいない。物理的な苦しみ以外のものにも襲われる。トンネルを抜けると曇っていた。あんなに晴れていたのに。

 

郡山駅

水郡線は水戸と郡山を繋ぐので水郡線と名付けられている。なんとなく響きがいい。スイグンセン。僕は電車が大好きだけれど、18切符の旅をしたことがないので、あまり色々なものには乗っていない。この冬こそ。イザスイグンセン。

高い建物がたくさん立ち並ぶ郡山駅周辺は、我こそが福島県の中心だ、と福島市の方向を向いて威張っている様子に見える。県の中に大きな都市がたくさんあるのは良いことだ。仙台に住んでいると本当にそう思う。仙台は仙台しかない。どこへ行っても仙台ほどではないからがっかりしてしまう。だからこそ東京に憧れるのだ。東京は仙台を超えてくれる。渋谷が、浅草が、新宿が、下北沢が、六本木が、吉祥寺が、他にもたくさん名前の知っているどこかが、ちゃんと仙台を上回ってくれる。

それでも仙台が愛しい。パルコがあるから、とかではない。生まれ育った記憶と、大好きな友人がいる。それだけ。

 

新白河駅(通過)

駅を一つ通過していた。新白河。ここから南は一山の価値が高まって来るらしいけれど、窓の外を見るとびっくりするほどTHE田舎が広がっている。もはや水田も見当たらない、みたいな風景だ。

過ぎると黒磯の街が広がっているのが見える。なぜ黒磯だと分かったかというと、Googleマップで調べたからだ。新幹線に乗っている間に位置情報を確認するのがすごく好きだ。一瞬で通り過ぎる様々にも、無数の営みがあるのだ、なんてことは考えず、ただ記号のように、平面のように街を見る。

 

那須塩原駅(通過)

今年の夏に車で那須に来た。Googleマップにはその時に付けた目印が残っている。お気に入りの場所には星マークを。もう2度と来ないんだぜあの夏は。ずっと星が消せない。

この先はもう自力では来たことがない場所だ。新幹線と高速バスでしか辿り着けない、遠い遠い街。でもいつか、僕は辿り着いてしまう。ますます鈍感になるだろう。ベルが鳴る。

 

宇都宮駅

仙台から見ると、宇都宮は思ったより遠い。栃木県は案外縦長で、宇都宮は関東寄りだ。降りたり歩いたりしたことはない。

緑色の高速移動式鉄箱が僕を追い抜いた。あれに乗れば仙台から東京は1時間半だ。本当にそんなことがあり得るのか、と思ってしまう。今年の春に乗った飛行機は、仙台と福岡を2時間で移動した。そんなことがあり得るのか。このスピード感に、どうしたって慣れない。

宇都宮、関東寄りとさっき書いたけど、あれは嘘だ。駅から離れたらすぐ田舎の景色が広がっていた。福島と同じだ。U字工事のネタか何かで、栃木は東北に入ればナンバー2になれる、みたいなボケがあった気がする。北関東といえば、群馬に足を踏み入れたことがほとんどない。どんなところなんだろうな。逆にずっと行かないでおくのもいいかな。

 

小山駅(通過)

空腹。空腹だ。

お腹が空くとあなたはどうなりますか。僕はやる気がなくなります。当然文章も浮かんで来ない。空腹のまま過ごすことが多いので能率が下がってるのだと今やっと気付く。

ちゃんと3食取らなきゃ駄目だよな、と分かってはいるけれど、朝と昼を両方抜いたりしてしまう。めっきり痩せた。48kg台をふらふらと。たまに体をあちこち触って、細いなー薄いなーま思う。骨格がそんなに細くないのであまり痩せているように見えない、と昔は思っていたのだけれど、今はどっからどう見ても弱そうだ。

ジムにでも通おうかな。24時間営業のジムが近所に出来たので気になっている。月会費は7000円くらい。ところでジムって何するところ?正直わかっていない。やめたほうがいいかもしれない。

 

大宮駅

アルディージャ鉄道博物館!すみません勝手なイメージで。

父が鉄道好きなので、車で鉄道博物館に来たことがある。いつのことでしたっけ。最高のテーマパークだった記憶がある。また行きたい。

やっぱり空腹は続いていて、とはいえ下車して弁当を買う時間や度胸がないので、カバンに隠し持ったグミを、悪いことしてるみたいにこそこそと食べる。人前でグミを食べるのが少しだけ恥ずかしいのは僕だけだろうか。21歳の眼鏡の男性がニヤニヤと食べていると気持ち悪い気がする。グミが似合う男になりたかったぜ。ああ、松坂桃李ならグミを持ち歩いて食べていても全く問題なさそうだな。松坂桃李になりたい。

僕はいろんなものになりたいと言う。これは愚かなことだ。僕が言う「なりたい」とはすなわち、努力せず突然変異的に、朝起きたら、「入れ替わってる〜!!!」みたいなノリでそれに「なりたい」のだから。松坂桃李は生まれながらにして松坂桃李だったわけではない。いや、確かに生まれた時も松坂桃李だったのだけれど、ちゃんと努力をして松坂桃李を確立し、松坂桃李として成長を続けている。その努力を前提とせず、松坂桃李になりたいと言う僕が松坂桃李になれるはずがない。ついでに星野源にもなれない。

大宮でこんなに松坂桃李について思いを馳せているのだし、松坂桃李が大宮生まれだったら面白いな、と思って調べたら神奈川県・茅ヶ崎の生まれだった。あんまり茅ヶ崎感出てませんね。もっとシティーボーイシティーボーイしているかと思った。

見てごらん、あれが荒川よ。僕は僕に言う。東京に入る。思いついたことを書いているだけなのだから別に紀行文ではないけれど、せめて写真を撮っておけば面白かったかもな、とここで思い至る。おいおい、もう2時間経ってるんだぞ。僕はもう戻れないんだぞ。ここがどこだか知ってるか。ここはトーキョー、ブラックホール

北区。ざっくりとし過ぎではないか。渋谷区とか、葛飾区とか、世田谷区とか、色々ある中で、北だから北区。その潔さが愛しい。

車内アナウンスが鳴って、上野が近付く。さて。えっ。あれ?

 

上野駅

上野で降りようと思っていたのだけれど、この新幹線、東京駅まで行くんじゃないか。どうしよう。東京まで行ってしまおうか。それとも。

悩んでいる内にも電車はどんどんと進んで行く。そういえば東京駅にほとんど行ったことがない。新幹線は上野で、高速バスは新宿で、それぞれ降りてしまうから。

腹は決めた。一駅延長。切符は23区内ならどこへでも行けるようになっている。行くぜ江戸。待ってろトーキョー。

隣に座る女性は上野で下車した。良い旅だったぜ。あなたはほとんど眠ってしまっていましたね。おかげでのびのびと過ごせました。

ここが地下のどのくらい深い位置にいるかわからないのに、ちゃんと電波が入っていて驚く。もしメイプル超合金のカズレーザーのボケのようにWi-Fiが見えたら、東京はもう隙間もないくらい飛んでいるんだろうな。

秋葉原を抜ける。ここも歩いたことのない街だ。東京には知らない場所がたくさんある。仙台ですら全てを知らない僕に、この街はどうしようもないくらい大きい。だから、どこへでも隠れられるような気がするよ。

東京に、逃げに来たのだ。隠れに来たのだ。それを書く矛盾が見える。

 

東京駅

ここがどこで、北がどっちで、どこへ向かえば良いのか、全くわからない。どの改札をくぐれば良いのかわからない。そもそも目的地がない。

でも、着いたぜ、トーキョー。

笑えないぜ。どこにだって行ける。

 

 

 

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